防災科研では、1979年から関東・東海地域において高感度地震観測を行ってきました。
さらに、阪神淡路大震災を契機として設置された地震調査研究推進本部の基本方針に基づき、日本全国を対象とした高感度地震観測網・Hi-netを構築してきました。
このHi-netは、全国的に統一的な観測点仕様による平均間隔20〜25kmという高密度で均質な観測網です。
この地震観測データは、気象庁における監視業務等に利用されるとともに、ホームページを通じてすべて公開されており、日本における地震調査研究に大いに活用されています。
我々はこの地震観測データを使用し、日本列島下の3次元地震波速度構造に関する研究を進め、日本列島全域における
3次元地震波速度構造の標準的モデル
を高分解能で得ました。
さらに、その速度構造モデルをもとに、地球の表面を覆う地殻とマントルの境界であるモホロビチッチ不連続面(モホ面)の深度構造モデルについての研究を進めてきました。
その結果、日本列島の陸側を覆うプレートのモホ面の深度構造モデルを得ることができ、Tectonophysics誌に受理されましたので、そのモホ面深度構造モデルを公開いたします。
なお、解析手法や結果に関する詳細は以下の論文を参照してください。
Matsubara M., H. Sato, T. Ishiyama, and A. D. Van Horne (2017) Configuration of the Moho discontinuity beneath the Japanese Islands derived from three-dimensional seismic tomography, Tectonophysics, 710-711, 97-107, doi:10.1016/j.tecto.2016.11.025.
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この研究で得られたモホ面深度は図の通りです。
主要な成果は
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モホ面の浅い領域は(1)北海道東部の千島弧,(2)東北地方三陸沖,(3)本州北部の中新世の中絶リフト領域,(4)紀伊半島や関東地方,(5)別府・島原地溝帯,(6)沖縄トラフの延長上の九州地域に存在する.
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深いモホ面は(1)北海島日高衝突帯や伊豆衝突域,(2)東北日本の火山フロント沿い,(3)白亜紀の花崗岩貫入による西南日本の非変形大陸地殻域に分布する.
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日本海に沿った東北日本の浅いモホ面は日本海拡大時の中絶リフト構造と一致し地殻の薄化や,リフトを埋めた玄武岩や厚い堆積物による負の重力異常域と一致する.
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島弧同士の衝突帯である北海道の日高衝突帯は衝突軸の南北に沿って深いモホ面が分布し,負のブーゲ異常とも一致する.
日高衝突帯北部は千島弧の衝突域ではないが,北米プレートとの衝突域であり,南部ほどではないが30kmより厚いモホ面が分布している.
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伊豆衝突帯では伊豆小笠原弧の付加により,ユーラシアプレートのモホ面が厚くなっている.
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東北地方の北上山地ではモホ面が深くなっている.
これは,日本列島が大陸縁辺に存在したころの地殻の特徴を保持していると考えられる.
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東北奥羽脊梁山地では火山フロントに沿って深いモホ面が分布する.
火山のマグマの底付作用や太平洋プレートの沈み込みによる東西方向への短縮の影響により,地殻が厚くなっていると考えられる.
です。
関連論文
Matsubara, M. and K. Obara (2011) The 2011 Off the Pacific Coast of Tohoku earthquake related to a strong velocity gradient with the Pacific plate, Earth Planets Space, 63, 663-667, DOI: 10.5047/eps.2011.05.018.
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