<ポイント>
- 人には感じることの出来ない遠地地震の地震波が日本列島を伝播する様子を捉えた
- 短周期成分(1秒以下) : 道東に到着した地震波が日本列島に沿って南西方向に伝わる様子や北上地方にT波(※1)が広がる様子を明瞭に見ることが出来る
- 長周期成分(25-50秒) : 地震発生から7分後程度(午前6時頃)で,
波長400kmの波が日本全国を横断することが確認できる。
地震発生から20分経過した後もまだ地震波は継続して観測され続ける。
2014年6月24日5時53分頃(日本時間),アリューシャン列島でM7.9の地震が発生しました(図1)。
防災科学技術研究所の高感度地震観測網(Hi-net)では,この地震による極めて弱い(人が感じることの出来ない)揺れが日本列島を通過する様子を捉えました。
海外で大きな地震が発生したときの地震波の伝わり方や波の種類の違いをわかりやすく表現するために,アニメーションを用いて波動伝播を可視化しました。
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図1 米国地質調査所 (USGS) による震源の位置とメカニズム解
Hi-netで見る短い周期帯域の地震波の伝播
地震到達前の午前5時56分(日本時間)から7時までのデータを可視化しました。
拡大版 動画ダウンロード:
20140624AleutianYURE_wave.mp4
(MP4 ビデオ 6.0MB)
左側の日本地図上の四角ひとつひとつは,Hi-netの観測点の位置を表します。
色は,各観測点で観測された振幅の1秒ごとのRMS(Root Mean Square:二乗平均平方根)振幅値に対応しています。
また,過去に比べて有意に大きな振幅(※2)が観測されたときに大きな四角で表示することにより,地震波の伝わる様子がより分かりやすくなるようにしました。
右側には,同じ時間に観測された北海道から東北地方の主な観測点(図2)の地震波形を示しました。
波形上に現れる赤線の時間のデータが,左側の地図に表示されます。
横軸は地震波到達前の5時56分からの経過時間(分)となっております。
図2 波形表示に用いた観測点の位置
5時58分10秒過ぎに北海道・知床半島で最初に四角が黄色く,また大きくなり,P波(初動)が到着したことが分かります。
この波は,約2分半かけて,九州まで日本列島を縦断していきます。
6時25分頃からは,T波( ※1)
に起因すると思われる振動が岩手県・北上地方で広く観測されている様子がよく分かります。
なお,6時17分頃および6時36分頃には,M6程度の余震による波が通過しています。
Hi-netで見る長い周期(25秒-50秒)帯域の地震波の伝播
動画ダウンロード:
20140624Aleutian1000.mp4
(MP4 ビデオ 4.2MB)
Hi-netでは1秒よりも短い周期の振動を観測することに適した地震計を用いていますが,地震計やデータ収録装置の特性を補正することにより,周期数十秒で振動する波の概略的な特徴も捉えることが可能です。
ここでは,特性補正後の波形にバンドパス(帯域通過型)フィルタを適用することにより,25秒〜50秒帯域の地震波が伝わる様子を可視化しました。
図では,震央からの等距離線を200km毎に細線で表示するとともに,震央距離3000km,4000kmの等距離線を太線で表示しています。
地震発生から7分後程度(6時頃)で,波長400kmの波が日本全国を横断することが確認できます。
地震発生から20分程度経過した後も地震波は継続して観測されつづけています。
※1
海水中のSOFAR(SOund Fixing And Ranging)チャネルを伝わる音波。
経路の大部分が深い海である時に現れる特徴的な地震波で,立ち上がりは不明瞭かつ長く振動が継続することが特徴。
P波,S波に続く第3番目(Tertiary)の波という意味。
小原一成, 前田拓人 (2009), T波, 日本地震学会広報紙「なゐふる」, No.75, pp.2-3.
※2
毎秒観測される1秒間のRMS振幅値が,6〜10秒前の5秒間のRMS振幅値の比が10以上になった場合,四角を大きく表示しています。
※3
地震の規模を示すマグニチュードおよび発震機構解はアメリカ地質調査所 (USGS) のHPから引用しました。
図1の海底地形データにはNOAA/NGDCによるETOPO2v2を利用しました。
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