概要
2005年7月20日から23日にかけて,愛知県東部において深部低周波微動の活動が活発化しました。
この活動と同時に防災科研の傾斜計にゆっくりとした微小な変化が捉えられました。
これらの変化は,
東海地方の地下に沈み込んだフィリピン海プレートと陸側プレートの境界面で短期的スロースリップイベント
(ゆっくりすべり) が発生し,それと同期して深部低周波微動が発生したことを示していると考えられます。
今回と同様な現象は2004年6月および12月にも観測されていますが,今回の現象はこれらにくらべると,
より東側で発生したと考えられます。
そのため愛知県東部や静岡県西部に設置されている気象庁の歪計でも明瞭な変化が捉えられたものと考えられます。
気象庁による歪計データと低周波地震との関連の検討については
こちらのページをご覧ください。
▼図1
防災科研 関東・東海地殻活動観測網 傾斜観測点位置図
▼図2
防災科研 関東・東海地殻活動観測網 傾斜記録 (2005年7月1日0時∼7月22日16時)。
図中の破線から異常変化が生じている。
▼図3
防災科研 関東・東海地殻活動観測網 傾斜記録 (2005年7月16日0時∼7月22日16時)
▼図4
防災科研Hi-net傾斜記録 7月20日から22日にかけてゆっくりした変化が見られる。
名古屋気象台の気圧と雨量も示した。
▼図5
推定されたスロースリップイベントの断層モデル
(ピンクの四角・赤矢印)。
同時期に発生した深部低周波微動の震央位置を橙円で示す。
スロースリップイベントと深部低周波微動がほぼ同じ位置で発生したことが分かる。
▼図6
7月20日のエンベロープ波形。午前6時ごろから活発な微動活動がはじまったことが分かる。
▼図7
2004年12月の防災科研Hi-net傾斜記録。12月17日から19日にかけてゆっくりした変化が見られる。
▼図8
2004年12月イベントの断層モデル
謝辞:
気象庁のホームページで公開されている気圧・雨量のデータを使用させていただきました。記して感謝いたします。
参考文献:
- K. Obara, H. Hirose, F. Yamamizu, K. Kasahara (2004),
Episodic slow slip events accompanied by non-volcanic tremors in southwest Japan subduction zone,
Geophys. Res. Lett., 31 (23), doi: 10.1029/2004GL020848
- 廣瀬仁・小原一成 (2005),
西南日本の短期的スロースリップイベントと低周波微動 (2004年11-12月 紀伊半島北部・愛知・四国西部),
地球惑星科学関連学会2005年合同大会 D007-012
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