7章 地震発生の時系列

 前項までは,主として地震の起こる場所について述べてきましたが, ここでは,地震発生の時間経過について,その基本的な特徴を紹介します.
 まず,一回の地震活動の起き方としては,大きな地震が単独で発生する単発地震, 大地震がたくさんの小さな地震を伴う本震・余震型地震, とくにどれが主というわけでもなく,似たような大きさの地震が集中的に発生する群発地震などがあります.
 一方,より長期的な地震発生の時系列を見ると, 特定のプレート境界や活断層で発生する地震にはおおむねの周期性が認められるとともに, ある領域の地震活動をとると,いわゆる地震の活動期と静穏期とを区別できる場合があります.


7.1 本震と余震

 大きな地震が発生すると,それに引き続いておびただしい数の余震がよく観測されます. 本震が浅いところで発生した場合には,とくにこのような傾向が顕著なようです.
 余震の発生する場所は,本震を生じた断層面のごく近傍であることが知られています. このため,本震直後の期間,たとえば24時間以内に発生した余震の空間分布に基づいて, 本震の発震機構解が示す2つの節面のうちのどちらが断層面であるかを判別したり, また,断層面の長さや幅などを余震分布から推定したりすることが行われます.

=== 図7.1 1995年兵庫県南部地震の本震と24時間以内の余震分布(気象庁データによる) ===
1995年兵庫県南部地震の本震と24時間以内の余震分布
 図7.1には,1995年兵庫県南部地震(M7.2)の本震と, 本震発生後24時間以内に発生した余震の震源分布が示されています. 明石海峡にある大きな丸印が本震で,それ以外の小さな丸印はすべて余震です.
 震源分布の全体は,淡路島から神戸市にかけての約40kmにわたって南西-北東方向に直線状の分布を見せています. この余震分布により,本震の発震機構解が提示する2つの節面のうち, 北東-南西方向のほぼ垂直な面が断層面であり,右横ずれ断層運動を生じたものと判断されました.

 図7.1で, 明石海峡に大きな丸印でプロットされた本震の位置は, あくまで図2.2で示した 断層破壊の開始点を示しているにすぎません. 本震そのものは,余震で埋め尽くされた40kmにわたる断層面を形成した事件であり, 巨大なエネルギーが明石海峡にある1点から放出されたわけではありません. ふたたび人体のたとえを借りれば,本震で生じた傷口がズキズキしている状態が 余震活動に対応していると言えるかもしれません.



 余震には大小さまざまなものが混じりますが,そのうちの最大のものでも, 本震よりはMが1以上小さいことが普通です. また,本震の直後には大量の余震が発生するものの, 時間の経過につれて余震の発生頻度は急激に低くなることが知られています.
 この余震数の減衰については,「改良大森公式」と呼ばれる統計的な時系列モデルがよく適合します. これは,本震発生からの経過時間を t とすると,その時の余震発生率 f が
   f = K /(t +c)p
により与えられるというものです. ここで,K,c および p は定数であり,p は通常1よりやや大きいくらいの値をとる場合が普通です.

=== 図7.2 1995年兵庫県南部地震の余震活動.(左)地震後3ヶ月半の日別余震回数,(右)地震発生から3年間の余震発生率の推移 ===
1995年兵庫県南部地震の余震活動
 図7.2は, 1995年1月17日兵庫県南部地震(M7.2)に伴った余震活動の推移を示しています. 左の図は4月末までの日別余震回数であり,余震の発生数は時間とともに急激に少なくなることがわかります.
 右の図は,地震後3年間にわたる余震発生率の減衰の様子を示しており, 横軸は地震発生時点からの経過日数,縦軸は1日あたりの余震回数を,いずれも対数目盛で表現しています. この図では,余震の発生率がほぼ直線状に減っていく様子が見られ, これは,余震数がベキ乗則で減衰するという上記の改良大森公式がよく成り立っていることを示しています.



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