背景



  12月26日の日本時間午前10時頃(2004/12/26 0:58:49 UTC) 、 インドネシアのスマトラ島北部西岸約100km沖のインド洋を震源とするマグニチュード 9.0(USGSによる)の地震が発生しました。
  この地域はインドプレートがビルママイクロプレートの下に年間約6センチメートルの速度で北東方向に斜めに 沈み込んでおり、今回の地震もこのプレートの沈み込みに伴う低角逆断層のメカニズムを示しています(USGSによる)。 図1でわかるようにインドネシア島弧(スンダ弧)を形作るこのプレート境界(ジャワ海溝)は、 東はニューギニアに近いバンダ海から始まり、インドネシアの南岸を通って、今回の地震の震源となった スマトラ北端から北方のアンダマン諸島を経て、更にミャンマーに上陸して東ヒマラヤ地峡へつながっています。 一つの弧としてはチリ弧と並んで世界最大級の長さです。日本列島の下に沈み込む太平洋プレートや フィリピン海プレートと異なり、インドプレートはインドネシア島弧の下にほぼ鉛直に近い急角度で沈み込んでいます。 今回地震のあったスマトラ北部からアンダマン海にかけては沈み込みの方向が海溝軸に対してかなり斜めになっており、 同時にプレート先端まで(深発地震面)の深さも200-100kmと浅くなっており、アリューシャン弧の西端の状況と似ています。

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図1 インドネシア周辺のテクトニクス

  ジャワ海溝では過去にも多くの大地震が発生しています。 図2に1900年以降のM6.5以上の地震の震央を示します。スマトラ島の南西岸では1914年(M8.1)、1935年(M8.1)、 1969年(M8.2)、2000年(M8.3、死者110名)と、場所を変えながら20-30年に1回程度の頻度でM8級の地震が発生しています。 またアンダマン諸島では1941年にM8.7という巨大な地震がありました。 これらの地震はいずれも多くの地震動および津波を生じたはずですが被害の詳細は不明です。
  今回のM9.0の地震の震源は1969年(M8.2)の震源と近い位置にありますが、余震分布と詳しい震源解析によると、 断層の破壊は震源から500km近く北へ進行して、そこからさらにアンダマン諸島の下まで達し、 非常にゆっくりとした海底全体の運動が大きな津波を生じたようです。
(建築研究所八木氏の解析による http://iisee.kenken.go.jp/special/20041224sumatra.htm

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図2 インドネシア周辺の過去の主な地震   [米国地質調査所のカタログに基づく]
(1900年以降のM6.5 以上の地震。日時が記されているものはM8 以上。赤丸は死者100人以上)

  しかしスマトラ北部からアンダマン諸島の下に巨大地震が差迫っていて、 しかもそれがこのような大津波を発生するであろうことは、残念ながらだれも予測できませんでした。 特に大きな津波被害のあったスリランカ、インド東海岸、ミャンマー南部・タイ・マレーシアの西岸地域、 モルジブ、そしてアフリカ東海岸は地震活動が非常に低いことも手伝って、太平洋沿岸国のような津波警報のための 国際組織もなく、地震・津波災害に対してまったく無防備の状態だったといえます。 この大災害を教訓として、地震・津波観測網を整備するなど災害軽減のための国際協力を推進することが強く望まれます。
井上 記