防災科学技術研究所(防災科研)では,1979年から関東・東海地域において高感度地震観測を行ってきました。 さらに,阪神淡路大震災を契機として設置された地震調査研究推進本部の基本方針に基づき, 日本全国を対象とした高感度地震観測網(Hi-net)を構築してきました。 このHi-netは,全国的に統一的な観測点仕様による平均間隔20〜25kmという高密度で均質な観測網です。 さらに、平成23(2011)年東北地方太平洋沖地震の後には北海道から房総半島沖にかけて,日本海溝海底地震津波観測網(S-net)を構築し,観測データを蓄積しています。 これらの地震観測データは,気象庁における緊急地震速報にも活用されている他,監視業務等に利用されるとともに,ホームページを通じてすべて公開されています。 我々はHi-net等の地震観測データを使用し,日本列島下の3次元地震波速度構造に関する研究を進め2008年に標準速度構造モデルを公開しました。 その後,順次改定してきましたが,このたびS-netのデータも活用することにより海域の下の速度構造も精度よく推定することが可能になり,その結果がIntechOpen社からオンライン出版されましたので,海域まで広げられた標準的構造モデルを公開いたします。

   >>データダウンロードページはこちら (Site to download velocity data)

   解析手法や結果に関する詳細は,以下の論文を参照してください。
   Matsubara, M., H. Sato, K. Uehira, M. Mochizuki, T. Kanazawa, N. Takahashi, K. Suzuki and S. Kamiya (2019) Seismic velocity structure in and around the Japanese Island src derived from seismic tomography including NIED MOWLAS Hi-net and S-net data, Seismic Waves - Probing Earth System, IntechOpen, 1-19, doi:10.5772/intechopen.86936

   なお,この構造の断面図を表示するソフトウェアも 『日本列島三次元地震波速度構造表示ソフトウェアの公開』 として公開されています。

   この研究で得られた新たな知見は以下の通りです。
  • 防災科研S-netによる海域の地震や観測点のデータを用いた(図1)ことにより、太平洋の下の深さ10〜60kmの構造が明らかになった(図2)。
  • 平成31年(2018年)北海道胆振東部地震の震源域は深さ30kmに南北に延びるP波速度やS波速度が遅い領域の北端に位置する。
  • 沈み込む高速度な太平洋プレートのイメージングもエアガン探査などから明らかになっている構造と調和的である。


図1: 解析に用いた震源分布と観測点分布
Distribution of hypocenters used for seismic tomography.


図2: 深さ5-60kmにおけるP波速度、S波速度、Vp/Vsの分布
Depth slices indicating Vp and Vs perturbation and Vp/Vs at depths of 5-60 km. Colored area is the resolved area.